good thing

 社会の一貧民としての曙覧、日本国民の一人としての曙覧は、臆測ながらにほぼこれを尽せり。ここより歌人としての曙覧につきて少しく評するところあらんとす。
 曙覧の歌は比較的に何集の歌に最も似たりやと問わば、我れも人も一斉に『万葉』に似たりと答えん。彼が『古今』、『新古今』を学ばずして『万葉』を学びたる卓見はわが第一に賞揚せんとするところなり。彼が『万葉』を学んで比較的善くこれを模し得たる伎倆はわが第二に賞揚せんとするところなり。

固より悔む処はないのであるけれどしかし死という事が恐ろしくあるまいか、かよわい女の身で火あぶりに逢わされるという事を考えた時にそれが心細くあるまいか。家を焼くお七の心がいじらしいだけそれだけ、死に臨んだお七の心の中があわれであわれで悲しくてたまらん。死に近づく彼女の心の中は果してどんなであったろう。初より条理以外に成立して居る恋は今更条理を考えて既往を悔む事はないはずだ。ある時はいとしい恋人の側で神鳴の夜の物語して居る処を夢見て居る。

 はや鯉や吹抜を立てて居る内がある。五色の吹抜がへんぽんとひるがえって居るのはいさましい。
 横町を見るとここにも鯉がひるがえって居る。まだ遅桜がきれいに咲いて居る。
 何とかいう芝居小屋の前に来たら役者に贈った幟が沢山立って居た。この幟の色について兼ねて疑があったから注意して見ると、地の色は白、藍、渋色などの類、であった。
 陶器店の屋根の上に棚を造って大きな陶器をあげてある。その最も端に便器が落ちそうに立てかけてあるのが気になる。